丹後平古墳群出土品が重要文化財に指定されました
国指定重要文化財 青森県丹後平古墳群出土品

【文化財の種別】重要文化財(考古資料)
【名称・員数】青森県丹後平古墳群出土品・195点
【所有者】八戸市(青森県八戸市内丸1-1-1)
【指定年月日】平成30年10月31日 考第651号
指定までの経緯
丹後平古墳群(たんごたいこふんぐん)は、馬淵川の支流・土橋川に面した標高90~100mの丘陵に位置する、飛鳥時代中頃から平安時代前期にかけての群集墳(ぐんしゅうふん)です。八戸ニュータウンの開発に伴い、昭和62年(1987)から昭和63年(1988)、平成6年(1994)から平成10年(1998)、平成12年(2000)に発掘調査が行われ、一部は平成11年(1999)に国史跡に指定されています。出土品は、八戸市博物館で展示・収蔵しています。
1.文化財の概要


指定品は、飛鳥時代から平安時代にかけて造られた、小規模な円墳や土坑墓(どこうぼ)から出土した副葬品(ふくそうひん)や墓前祭祀(ぼぜんさいし)に用いられた土器の一括です。
国内に出土例がない「金装獅噛三累環頭大刀柄頭(きんそうしがみさんるいかんとうたちつかがしら)」をはじめ、東北地方に特徴的に分布する蕨手刀(わらびてとう)や錫釧(すずくしろ)・多量の玉などの豊富な出土品は、律令制(りつりょうせい)が及ばなかった北日本における社会や墓制の在り方を考える上で、価値が高いものです。
蕨手刀・錫釧・多量の玉類は、東北地方の末期古墳群に共通してみられる出土品です。錫釧は北海道でも出土し、北方との交流を示す遺物ともいわれています。また、銙帯金具(かたいかなぐ)や和同開珎(わどうかいちん)は、律令国家との関係がうかがえる資料です。
丹後平古墳群出土品は、文献上の記述にあらわれない八戸地域の当時の社会や墓制、律令政府との関係性を示すまとまった資料といえます。
2.重要文化財指定品の内訳
- 金装獅噛三累環頭大刀柄頭 1点
- 金属製品 86点
- 玉 54点
- 土器・土製品 52点
- 石製品 2点
計 195点
金装獅噛三累環頭大刀柄頭(きんそうしがみさんるいかんとうたちつかがしら)

長さ:9.7センチメートル
幅:5.8センチメートル
厚さ:1.8センチメートル
刀の柄の先端部分に取り付けた装飾金具で、環体(かんたい)・獅噛文(しがみもん)・茎(なかご)を一体に鋳出(ちゅうしゅつ)し、獅噛文には鍍金(ときん)を、環体には飛雲文(ひうんもん)を毛彫り(けぼり)した後に金象嵌(きんぞうがん)が施されています。
蛍光X線分析(けいこうえっくすせんぶんせき)によって、地金の材質は黄銅(おうどう)と判明しており、三累環内に獅噛文を配置する形式とともに、国内において出土例がありません。
金銅製(こんどうせい)の筒金具(つつかなぐ)・責金具(せめかなぐ)と柄木(つかぎ)が装着された状態で出土しており、柄木は放射線炭素年代測定により7世紀後半の年代が与えられています。柄頭は、精緻(せいち)な造りや形状などの特長から、より古い時期に朝鮮半島で製作された可能性があります。
3.今後の活用
今回の指定品は、平成30年(2018)4月17日~5月6日まで東京国立博物館で開催された「新指定国宝・重要文化財展」にて展示されました。同年10月6日~11月4日には、八戸市博物館で指定記念特別展「丹後平古墳群と蝦夷の世界」を開催し、指定品図録を刊行しました。
現在、指定品の一部は、八戸市博物館常設展示室にて展示公開しています。
更新日:2020年02月04日