疥癬に注意しましょう
疥癬とは?
疥癬とはヒゼンダニ(疥癬虫)という大変小さなダニがヒトの皮膚に寄生しておこる、かゆみを伴う皮膚の病気です。この病気には、通常疥癬と呼ばれるものと他の人に感染する力が強い角化型疥癬と呼ばれる2つの種類の病型があります。
(注釈)病院や施設など、長時間にわたり集団生活する場で、集団発生を起こすことがあり注意が必要です。
通常疥癬と角化型疥癬の違い
通常疥癬と角化型疥癬は、どちらもヒゼンダニが原因ですが、寄生しているヒゼンダニの数により感染力に大きな違いがあります。
通常疥癬 | 角化型疥癬 | |
ヒゼンダニの数 | 数十匹以下 | 100万~200万匹 |
患者さんの免疫力 | 正常 | 低下している |
感染力 | 弱い | 強い |
主な症状 | 丘疹(赤いぶつぶつ)、結節など | 厚い垢が増えたような皮膚状態(角質増殖)など |
かゆみ | 強い | 不定 |
症状が出る部位 | 顔や頭を除く全身 | 全身 |
どのように感染するのか
通常疥癬
潜伏期間:約1~2か月
長い時間、肌と肌、手と手が直接触れることで、ダニが移動して感染します。少しの時間ではほとんど感染しません。
まれに、患者さんが使用した寝具や衣類などを交換せずにすぐ他の人が使用することで感染することもあります。
角化型疥癬(ノルウェー疥癬と呼ばれることもあります)
潜伏期間:角化型疥癬患者から感染する場合は4~5日後に発症することがある
ダニの数が多く、感染力が強いため、短時間の接触、衣類や寝具を介した間接的な接触などでも感染します。また、剥がれ落ちた角質にも多数のダニが含まれていて、それが付着することでも感染します。なお、角化型疥癬患者から感染した場合でも、まずは、通常疥癬として発症します。
感染が疑われる場合には
まずは、皮膚科を受診し、正しい診断を受けましょう。早期に治療を開始し、施設・家庭内での感染を防ぎます。
【疑うべき症状と判断のポイント】
- 皮膚のかゆみ(特に夜間にかゆみが強くなる)
- 皮膚の紅斑・丘疹(赤いぶつぶつ)、鱗屑(白く細かいかさぶたのような状態)
- 手の平や手指間に「疥癬トンネル」と呼ばれる線状の 皮疹がある
ご家族が疥癬と診断されたら
通常疥癬の場合
- 同室で布団を並べて寝ない。
- 長時間、他の人と肌と肌を接触させない。
- 寝具や衣類など肌に直接触れるものの共用を避ける。 など
角化型疥癬の場合
周りの人にも感染する可能性が高いため、上記に加え、
- なるべく個室を用意。感染力がとても強いので、患者に接するときは予防着や手袋を着用する。
- 衣類、シーツ類は毎日交換し、個別に取り扱う。洗濯物は、乾燥機を使用するか、50℃以上のお湯に10分以上浸した後に個別に洗濯をする。
- 洋式トイレなどから感染することもあるため、こまめに清掃する。
- 掃除は居室を中心に掃除機で丁寧に掃除する。特に、寝具、マットなどは掃除機で表面を掃除する。
- 入浴は毎日行い、入浴時に厚くなった垢(角質)を飛び散らないようにしっかりこすり落とす。
- 殺虫は治療開始時に居室や共同使用していた部屋に殺虫剤を散布する。また、治療終了時にも念のため殺虫剤をもう一度散布する。
施設等で集団発生した場合
疥癬の潜伏期間は長く、潜伏期を抜けて発症する者がでる可能性の期間は数か月に及ぶため、発症者を的確に診断・治療し、角化型疥癬への進展を防げば、集団発生は終息します。過剰な感染予防処置を行ってスタッフが疲弊しないようにするのが、集団感染対策の要点です。
対応 | 通常疥癬 | 角化型疥癬 | |
患者隔離 | 不要 | 個室隔離 治療開始後1~2週間 |
|
身体介護 | 手洗い | 励行 | 励行 |
予防衣 | 状況に応じて(標準予防策) | 患者対応時は着用 | |
入浴 | 入浴に制限なし | 入浴は最後とし、浴槽や流しは水で流す。脱衣所に掃除機をかける。 | |
居室環境整備 | 患者個室の殺虫剤 | 不要 | 退院時に殺虫剤散布、水拭き、掃除機 |
掃除 | 通常の方法 | モップ・粘着シートなどで落屑を回収後、掃除機で清掃 | |
布団の消毒 | 不要 | ビニールに入れ、殺虫剤を噴霧し24時間密封 | |
車いす・ストレッチャー | 患者使用時清拭 | 殺虫剤散布、掃除機、清拭 | |
診察室・検査室ベッド | 患者使用時清拭 | ディスポシーツ使用 | |
血圧計 | 患者使用時清拭 | 殺虫剤散布後、清拭 | |
リネン類 | シーツ・寝具 | 通常の方法 他の患者との共用はしない |
自家感染予防のため治療のたびに交換 |
洗濯物 | ビニール袋に入れて運搬 | ビニールに入れ、殺虫剤を噴霧し24時間密封 | |
洗濯 | 通常の方法 | 洗濯後に乾燥機を使用。もしくは50℃10分間熱処理後洗濯 |
(注意)通常と角化型の疥癬をはっきり区別するのが難しい症例もあり、集団に免疫不全状態の者がいる場合とそうでない場合で対応が異なります。各施設に合わせた対応の検討をお願いします。
【参照】
- 疥癬とは(国立感染症研究所ホームページ)
- 高齢者介護施設における感染対策マニュアル(2019年3月改定)(厚生労働省)
- 疥癬診療ガイドライン(第3版)(日本皮膚科学会)
相談先
感染症に関する相談:八戸市保健所 保健予防課 感染症対策グループ (電話:0178-38-0716)
社会福祉施設における集団発生時には事故報告書の提出が必要です。詳しくは、こちらをご参照ください。
この記事に関するお問い合わせ先
こども健康部 保健予防課 感染症対策グループ
〒031-0011 青森県八戸市田向三丁目6番1号 3階
電話:0178-38-0716 ファックス:0178-38-0736
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更新日:2024年01月25日