【八戸特派大使通信】第7回 藤井 純子

更新日:2020年01月07日

藤井 純子(ふじい じゅんこ)/ 株式会社岡設計 代表取締役 設計管理本部長

藤井 純子さんの写真

昭和36年八戸東高校卒。昭和41年日本大学理工学部建築学科を卒業。現在、株式会社岡設計代表取締役設計監理本部長。昭和54年八戸市制施行50周年記念論文最優秀賞。建築業協会賞、東京都都市計画局長賞ほか受賞多数。著書「アメニティ都市」ほか多数。千葉県在住。

私の「はちのへ」

新井田川沿いの湊町に育った私は、今年の春、その上流の悠久の年月を秘めた是川遺跡の眠る台地の、人家や車道から隔絶した小高い林の麓に佇んだ。眼前に広がる景色は幼い頃の記憶を呼び醒さまし、懐かしい私の原風景「はちのへ」に抱かれている心地よい感動が込み上げてくるのを覚えた。素朴な営みが受け継がれ、この地が開発から守られてきたことに感謝し、しばし感慨に耽(ふけっ)た。

八戸を離れて40数年になるが、夫婦ともども八戸人であることからも、先祖代々の墓のある八戸は私の帰る処(ところ)であり心の拠(よりどころ)である。歳を重ねるに連れて曾(かつ)ての自然のままの、自然が豊かで普段の暮らしと共にあった時代の湊の海、新井田川、階上岳そして町や人が恋しく思い出される。漁師は生きるための糧を得、人々は清流で洗い物をしたり泳いだり、釣り糸を垂れたり、砂浜でハマグリやヒラ貝を足で探り当てたり、時には地平線に向かって、心の内を打ち明ける場であり、喜怒哀楽を包含する掛け替えの無い自然の恵みの空間であった。しかし八戸産業振興発展の代償に、この人々の身近な日常生活の海や川の水とは、直接触れ合うことが難しい間接的な存在となった。

八戸特派大使の私は、都会の友人や知人に誇りを持って「おんでやぁんせ」と故郷に招くことを躊躇(ちゅうちょ)する。それは観光スポットへのアクセスの悪さや遠来の客をもてなす四季折々の八戸の風土ならではの心尽くしに欠け、更に眺め見るだけの海や祭りでは飽き足りないからだ。

特に私は、八戸の歴史的中心市街地が人の賑にぎわいの失せた町となる危機を感じ、新幹線が開通する直前の平成14年6月『八戸市中心市街地の活性化』計画を市に提案した。馬淵川と新井田川に抱かれた町は、地の利を得て栄え八戸市街を形成してきた。しかし現状の八戸はスプロールし都市の求心力を失い、中心街は城下町の名残りの両側町を車に分断され、祭りの時以外は人が集まらない。町の復活は地緑社会の自立と結束にかかっている。

是川の緑の大地は、環境に関与する建築設計を生業とする私に、天与の恵みの、八戸固有の歴史と自然の「宝」を生かす建物・町づくりでなければ建設してはならない、と啓示を与えてくれたのだ。

(「広報はちのへ」平成17年 11月号掲載記事)

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