【八戸特派大使通信】第50回 石橋 祥子

更新日:2020年01月07日

石橋 祥子(いしばし よしこ)/ 財団法人 小原流研究院講師・フラワーコーディネーター

石橋 祥子さんの写真

岩手県種市町(現洋野町)生まれ。八戸東高校卒。帝京短期大学卒。財団法人 いけばな小原流研究院講師として全国で指導するほか、海外でのセミナーやデモンストレーションを担当。都内では赤坂教室・新宿教室を主宰するほか、八戸でも月に1 度教室を開催している。また、フラワーコーディネーターとして、駐日シンガポール大使館などの専属を務めるほか、各種イベント、花の万博、世界蘭展などを幅広く手掛けている。東京都在住。

種差海岸・花の渚にて

新春を寿(ことほ)ぐ格別な花、福寿草はいけばな人にとって憧れである。その花の自生地が種差海岸に残っている、と聞いた。もはや自生地などないと思い込んでいた私にとってそれは驚きだった。まさにここは手つかずの自然。

紺碧(こんぺき)の海と対照的な黄金色に輝くその幻の花の群生地を見つけた時の喜びは筆舌に尽くし難いものだった。

北国の春、5月連休の種差海岸、花の渚ではまた思わぬ花たちとの出会いがあった。数年前に「小さな浜の会」の会員である友人の吉田夫妻の案内で散策をしたが、それ以来花の渚に魅了されている。帰省のたびに訪れては季節によって移り変わる多種多様の草花を見るのが楽しみである。東京の友人生徒たちも訪れてはここの素晴らしさに感動してくれる。種差海岸は私のお国自慢である。

仕事柄、国内・海外へとよく出かける。南アフリカ喜望峰も何度か訪れている。前回は吉田夫妻も同行し植生の違う花々に感嘆していた。テーブルマウンテンを背に咲きほこる大輪の色鮮やかな花々が咲き乱れて目を奪う。

奥に海と岩場、手前に黄色いゆりが数十本咲いている草原の写真

でもやはり私はどこよりも種差海岸に咲く花々が好きだ。清々(すがすが)しい潮風を受けながら優しく清楚に、でもしっかりと根を張って咲いている春の花たちの姿はいつものように私の心を満たし仕事への活力を与えてくれる。

さて、市内の風張遺跡から出土した「国宝合掌土偶」は、両手を組み合わせ中座になった若い女性を象かたどったものである。これは、新しい生命が誕生する時を象徴しているのだろうか?私が、この土偶に出合った時、初めてにもかかわらず、古い友人と久しぶりに再会した時のような懐かしさを憶えた。

生命の誕生と自然界の営みは、ともに神秘的なことである。それゆえ、古代人は樹木や花のなかにも神の存在を見、豊穣(ほうじょう)を祈ったのだろう。古代の人々が、いま私が目にしている花を、私と同じように畏敬(いけい)の視線でとらえていたのかもしれないと、3500年前の祖先の人々に思いを馳せながら身も心も青く染まりそうな遊歩道を歩いた。

(「広報はちのへ」平成22年 8月号掲載記事)

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