石綿(アスベスト)飛散防止対策に関する規制が強化されます(令和3年4月1日より順次施行)
建築物等の解体工事における石綿の飛散を防止するため、令和2年6月5日に「大気汚染防止法の一部を改正する法律」(令和2年法律第39号。以下「改正法」という。)が公布されました。
また、令和2年10月7日に「大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」及び「大気汚染防止法施行令の一部を改正する政令」並びに関係告示が公布されました。
改正法は、令和3年4月1日より順次施行されます。
主な改正内容は、次のとおりです。
目次
(1)規制対象の拡大(令和3年4月1日施行)
(2) 事前調査結果の信頼性の確保(令和3年4月1日より順次施行)
(3) 調査を適切に行うために必要な知識を有する者(令和5年10月1日適用)
(4) 直接罰の創設(令和3年4月1日施行)
(5) 不適切な作業の防止(令和3年4月1日施行)
(6)その他(令和3年4月1日施行)
(1) 規制対象の拡大について(令和3年4月1日施行)
- 特定建築材料について
- 特定粉じん排出等作業実施届出書の提出について NEW
(2) 事前調査結果の信頼性の確保(令和3年4月1日より順次施行)
- 「建築物」及び「工作物」の定義
- 事前調査の対象について
- 事前調査の方法について
- 事前調査結果及び作業計画の説明・記録・保存・掲示について
- 事前調査結果等の報告について(令和4年4月1日施行)NEW
(3) 調査を適切に行うために必要な知識を有する者(令和5年10月1日適用)
(4) 直接罰の創設(令和3年4月1日施行)
(5)不適切な作業の防止(令和3年4月1日施行)
- 作業基準等の遵守義務の拡充について
- 特定工事の発注者等の配慮について
- 特定建築材料の除去等の方法(作業基準)について
- 特定粉じん排出等作業の完了の確認について
- 特定粉じん排出等作業の実施状況の記録について
- 特定粉じん排出等作業の結果の報告・記録作成・保存について
(6)その他(令和3年4月1日施行)
- 立入調査対象の拡充について
- 国及び地方公共団体の責務の創設について
3.外部リンク(環境省ホームページ、厚生労働省ホームページ)
1 改正の趣旨・概要
大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)において、これまでも国民の健康の保護及び生活環境の保全のため、建築物等の解体等に伴う石綿の飛散防止に係る規制措置が講じられておりました。
しかしながら、平成25年の法改正より5年が経過し、特定建築材料の見落としや取り残し、これまで規制対象ではなかった石綿含有建材(いわゆるレベル3建材)の不適切な除去作業により石綿を飛散させた事例が確認されたため、改正を行うこととなりました。
(1) 規制対象の拡大(令和3年4月1日施行)
- 規制対象について、石綿含有成形板等を含む全ての石綿含有建材に拡大されました。
- 作業基準順守義務の対象に下請負人が追加されました。
(2) 事前調査結果の信頼性の確保(令和4年4月1日施行)
石綿含有建材の見落としなど不適切な事前調査を防止するため、元請業者(又は自主施工者)に対し、一定規模以上等の建築物等の解体等工事について、石綿含有建材の有無に関わらず、調査結果の都道府県等への報告を義務付けます。
(3) 調査を適切に行うために必要な知識を有する者(令和5年10月1日適用)
解体等工事の元請業者又は自主施工者は、建築物の解体・改造・補修する作業を伴う建設工事を施工する場合は、石綿に係る書面及び目視による調査について、建築物石綿含有建材講習登録規定に規定する者又はこれらの者と同等以上の能力を有するものと認められる者に行わせることとなります。
- 当該規定は、建築物にのみ適用されます。
- 平成18年9月1日以後に設置の工事に着手したことが明らかとなった建築物及び工作物は、以後の調査を要しないこととします。
(4) 直接罰の創設(令和3年4月1日施行)
石綿含有建材の除去等作業における石綿の飛散防止を徹底するため、隔離等をせずに吹付け石綿等の除去作業を行ったものに対する直接罰を創設します。
(5) 不適切な作業の防止(令和3年4月1日施行)
解体等工事の元請業者に対し、石綿含有建材の除去等作業の結果の発注者への報告や作業に関する記録の作成・保存を義務付けます。
また、作業基準等の遵守義務が下請負人まで拡充されます。
(6) その他(令和3年4月1日施行)
都道府県等による立入検査対象の拡大、災害時に備えた建築物等の所有者等による石綿含有建材の把握を後押しする国及び地方公共団体の責務の創設等、所要の規定の整備を行います。
2 改正法の詳細
(1) 規制対象の拡大について(令和3年4月1日施行)
特定建築材料について
特定建築材料に該当する建築材料が、「吹付け石綿その他の石綿を含有する建築材料」と規定され、これまで規制されていなかった建材も含め、全ての石綿含有建材が規制対象となりました。
「石綿を含有する」とは
「石綿の重量が、当該建築材料の0.1%を超えるもの」または、「建築材料の製造または現場施工において意図的に石綿を含有させたもの」
建材の区分 | 改正後 | 改正前 |
---|---|---|
レベル1 (発じん性が 著しく高い) |
吹付け石綿 |
吹付け石綿 (石綿含有仕上塗材) |
レベル2 (発じん性が 高い) |
石綿含有断熱材 石綿含有保温材 石綿含有耐火被覆材 |
石綿含有断熱材 石綿含有保温材 石綿含有耐火被覆材 |
レベル3 (発じん性が低い) |
その他の石綿含有建材 (成形板等、石綿含有仕上塗材) |
その他の石綿含有建材 (成形板等) |
石綿含有仕上塗材については、施工方法に関わらず「その他の石綿含有建材(レベル3)」として取り扱うこととなりました。
ただし、吹付けバーミキュライト、吹付けパーライトは、従来どおり「吹付け石綿」に該当します。
特定粉じん排出等作業実施届出書の提出について
全ての特定粉じん排出等作業(特定工事)のうち、石綿を大量に発生させ、飛散させる原因となる建材に係る特定工事は「届出対象特定工事」と規定されました。
「届出対象特定工事」にする場合は、作業開始の14日前までに特定粉じん排出等作業実施届出書を提出しなければなりません。
【提出先】八戸市 環境部 環境保全課 調査指導グループ
(注意)作業場所が八戸市内である場合に限ります。
【特定建築材料の除去等の方法が技術上著しく困難な場合について(追加)】
「建築物等が災害等により倒壊するおそれがあり、法律の規定で定められた方法で作業を行うことが技術上著しく困難な状況である」と、都道府県知事等が判断した場合に限り、規定で定められた方法以外の方法で届出対象特定工事を施工することができるようになりました。
なお、このような状況において特定粉じん排出等作業実施届出書を作成・提出する場合は、届出書別紙に、規定された方法で作業を行わない理由を記載しなければなりません。
新様式に追加された項目の名称
特定粉じん排出等作業の方法が大気汚染防止法第18条の19各号に掲げる措置を当該各号に定める方法で行うものでないときは、その理由
建材の種類 | 工事の名称 | 届出の要否 |
---|---|---|
吹付け石綿 |
届出対象特定工事 | 提出必要 |
石綿含有断熱材 石綿含有保温材 石綿含有耐火被覆材 |
届出対象特定工事 | 提出必要 |
その他の石綿含有建材 (成形板等、石綿含有仕上塗材) |
特定工事 | 提出不要 |
令和4年4月1日より様式の一部が変更となります。
最新の届出様式(令和4年4月1日より適用)はこちら
【Word】特定粉じん排出等作業実施届出書(令和4年4月1日より適用)(Wordファイル:46.5KB)
【記載例】特定粉じん排出等作業実施届出書(令和4年4月1日より適用)(PDFファイル:191.9KB)
(2) 事前調査結果の信頼性の確保(令和3年4月1日より順次施行)
「建築物」及び「工作物」の定義
今般、石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号)において、建築物及び工作物の概念が明確化されたことを踏まえ、改正法における建築物及び工作物の概念は、石綿障害予防規則と同様に整備されました。
「建築物」とはすべての建築物のこと。建築物に設ける建築設備も含みます。 (建築設備の例) ガス若しくは電気の供給、給排水、換気、暖房、排煙又は汚水処理の設備など
「工作物」とは「建築物」以外のもの。土地、建築物又は工作物に設置されているもの、または、設置されていたもの。 (工作物の例)
(参考)建築物内に設置されたエレベーターについて エレベーターのカゴ等は「工作物」に該当し、カゴが昇降する空間の壁等は「建築物」に該当します。 |
事前調査の対象について
事前調査の対象は、従前より「解体等工事」と規定されており、具体的には、建築物又は工作物を解体、改造又は補修する作業を伴う建設工事のことをいいます。
今般、石綿障害予防規則において、「建築物等の解体等工事」に該当しない作業が整理されたことに伴い、大気汚染防止法においても同様に整理されました。
「建築物等の解体等工事」に該当しない作業は、事前調査の対象外となります。
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事前調査の方法について
解体等工事の元請業者又は自主施工者は、当該工事が特定工事に該当するか、事前調査を行わなければなりません。
また、解体等工事の発注者は、元請業者が行う事前調査に協力しなければなりません。(適正な調査費用の負担、その他調査において必要な措置)
事前調査は、石綿障害予防規則第3条第1項及び第5項に基づく事前調査と兼ねることができます。
- 事前調査はまず、「設計図書その他書面による調査」及び「特定建築材料の有無の目視による調査」を実施しなければなりません。
設置の工事に着手した日が、平成18年9月1日以後であることが明らかである建築物や工作物については、その後の調査は不要となります。 - 「設計図書その他書面による調査」及び「特定建築材料の有無の目視による調査」により、特定工事に該当するか否か明らかにならなかったときは、「分析による調査」を実施しなければなりません。
(1)「設計図書その他書面による調査」とは
- 設計図書等で、建築物等の設置工事に着手した日や改修等の履歴を確認する。
- 設計図書等で、建築材料の種類や使用箇所を確認する。
- 使用されている建築材料のうち、石綿が含有している可能性があるものについて、石綿含有建材データベース等を利用して使用の有無を確認する。
(2)「特定建築材料の有無の目視による調査」とは
- 作業現場において、設計図書と異なる点等がないか確認する。
- 建築材料に印字されている製品名や製品番号等を確認し、特定建築材料に該当する可能性のある建築材料を特定する。
(3)「分析による調査」の実施について
石綿障害予防規則第3条第6項の規定により、適切に分析調査を実施するために必要な知識及び技能を有する者として厚生労働大臣が定めるものに行わせなければなりません。
分析調査の実施については、特定工事に該当するものとみなして措置を講ずる場合に限り、省略することができるようになりました。
(4)個人による事前調査の実施について(解体等工事を業としている者は除く)
建築物の改造や改修を行うにあたり、「排出され、又は飛散する粉じんの量が著しく少ないもののみを伴う軽微な工事」を施工する場合は、自ら事前調査を行うことができることとなりました。
ただし、個人であっても、作業基準の順守義務等、法規制の対象となるため、
「特定工事とみなして飛散防止措置を講ずる」または、厚生労働大臣が定める調査者等に調査を行わせることが望ましいです。
「排出され、又は飛散する粉じんの量が著しくう少ないもののみを伴う軽微な工事」とは
床、壁、天井等への家具の固定のための穴あけ等、特定建築材料の一部を加工する作業のみを伴う工事のこと
事前調査結果及び作業計画の説明・記録・保存・掲示について
(1)事前調査結果及び作業計画の説明、説明資料の保存について
解体等工事の元請業者は、解体等工事の作業開始前までに事前調査の結果を発注者に文面で説明をしなければなりません。
また、「特定工事」に該当する場合は、特定粉じん排出等作業に係る作業計画を作成し、文面で説明をしなければなりません。
さらに、解体等工事が「届出対象特定工事」に該当する場合は、特定粉じん排出等作業を開始する日から14日前までに説明をしなければなりません。
工事名称 / 項目 |
事前調査結果 |
作業計画 |
文面による説明の時期 |
---|---|---|---|
届出対象特定工事 |
説明必要 |
説明必要 |
特定粉じん排出等作業を 開始する14日前まで |
特定工事 | 説明必要 | 説明必要 |
特定粉じん排出等作業を 開始する前まで |
特定工事以外の工事 |
説明必要 | 説明不要 | 作業開始前まで |
元請業者は、発注者への説明に使用した文面を、特定工事が終了した日から3年間保存しなければなりません。((2)「事前調査に関する記録」とは異なりますのご留意ください。)
なお、説明方法や保存方法については、紙媒体の他、電子データによる方法も可能です。
発注者への説明事項は以下のとおりです。
発注者への説明事項(特定工事に該当しない場合)
(例:建築物石綿含有建材調査者講習 等の講習を修了した旨、一般社団法人日本アスベスト調査診断協会に登録されている旨)
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発注者への説明事項(特定工事に該当する場合)
(例:建築物石綿含有建材調査者講習 等の講習を修了した旨、一般社団法人日本アスベスト調査診断協会に登録されている旨)
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発注者への説明事項(特定工事のうち、届出対象特定工事に該当する場合)
「建築物等の概要」とは建築物等の構造(鉄筋コンクリート造、鉄骨造、木造など)、階数、延べ面積等のこと |
(2)事前調査結果の記録・保存について
解体等工事の元請業者または自主施工者は、「事前調査に関する記録」を作成し、特定工事が終了した日から3年間保存しなければなりません。
また、「調査を行った者が調査者等に該当することを証明する書面」の写しもあわせて保存しなければなりません。(平成18年9月1日以降の建築物の場合を除く)
((1)発注者への説明資料とは異なりますので、ご留意ください。)
なお、作成した記録は、紙媒体の他、電子データによる保存が可能です。
「調査を行った者が調査者等に該当することを証明する書面」とは
- 建築物石綿含有建材調査者講習登録規定に基づく講習を受講した者は、講習機関から発行された講習修了証
- 一般社団法人日本アスベスト調査診断協会に登録された者については登録証
「事前調査に関する記録」への記載事項は以下のとおりです。
事前調査結果の記録に係る記載事項(設置工事の着手が平成18年9月1日以降の場合)
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事前調査結果の記録に係る記載事項(設置工事の着手が平成18年9月1日より前の場合)
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(3)個人による事前調査結果の記録・保存について
以下の条件を満たした場合に限り、簡易的な方法で事前調査の記録を作成・保存することができます。
「排出され、又は飛散する粉じんの量が著しくう少ないもののみを伴う軽微な工事」とは床、壁、天井等への家具の固定のための穴あけ等、特定建築材料の一部を加工する作業のみを伴う工事のこと |
簡易的な記録の作成方法及び保存方法(一例)
工事に係る部分の作業前、作業の様子を撮影し、設計図書その他の書面とともに保存する。
(4)事前調査結果及び作業計画の掲示について
- 解体等工事の元請業者または自主施工者は、解体等工事の開始前までに事前調査結果を現場に掲示し、作業の終了まで掲示しなければなりません。
また、「特定工事」に該当する場合は、特定粉じん排出等作業の内容についても掲示しなければなりません。 - 掲示のサイズについては、A3用紙(42センチ×29.7センチ)以上と規定されました。(幅及び長さは問いません)
なお、文字のサイズに規定はありませんが、見えやすいように十分配慮をお願いします。
掲示方法として石綿障害予防規則に基づく掲示に追記する形で表示して差し支えありません。(重複する事項は、重複して表示する必要なし)
掲示の内容については、以下のとおりです。
事前調査結果に関する掲示の事項
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特定工事(特定粉じん排出等作業)に係る掲示の事項
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(5)事前調査結果の現場への据え置きについて
解体等工事の元請業者又は自主施工者は、事前調査に係る解体等工事を施工するときは、「事前調査に関する記録の写し」を工事現場に据え置かなければなりません。
「事前調査に関する記録」の詳細については、「(2)事前調査結果の記録・保存について」をご確認ください。
「現場に据え置く」とは
工事を施工する者や都道府県等が、現場で事前調査の記録を確認できる状況であること。
据え置きの方法
印刷した文面の他、電子データ(ノートパソコン、タブレット端末等)による保存が可能です。
据え置く場所(一例)
現場事務所、作業現場に向かう作業車等、現場ですぐ確認できる場所
事前調査結果の報告について(令和4年4月1日施行)
解体等工事の元請業者又は自主施工者は、令和4年4月1日以降に「一定規模以上」の解体等工事を実施する際には、事前調査の結果を遅延なく都道府県知事等に報告しなければなりません。
なお、虚偽の報告をした場合は、30万円以下の罰金が科せられます。
報告は、原則、電子申請(石綿事前調査結果報告システム)により行っていただきます。
解体等工事の場所が八戸市内の場合、報告先は八戸市環境保全課です。
報告の概要については以下のとおりです。
(1)石綿事前調査結果報告システムによる報告(原則)
令和4年3月18日(金曜日)より、石綿事前調査結果報告システムによる報告の受付を開始します。
- システムの利用には、事前に「gBiZID(gビズID)」への登録が必要となります。
- 石綿事前調査結果報告システムへのアクセスはこちら
- 石綿事前調査結果報告システムの操作マニュアルなどはこちら
(石綿)事前調査結果の報告について(環境省ホームページ)
(2)様式による報告(様式第3の4)正本、写し1部
石綿事前調査結果報告システムによる電子申請が困難である場合には、紙媒体による報告も受け付けます。
- 事前調査結果報告書の様式はこちら。
【Word】事前調査結果報告書(Wordファイル:25.6KB)
(自主施工者の場合は、請負人に施工させることとした場合の請負代金相当額) |
参考事項 (1)事前調査結果の報告対象工作物(令和2年環境省告示第77号)
(2)「請負金の合計」とは材料費も含めた作業全体の請負代金の額をいい、消費税を含む額とする。ただし、調査費用の代金は含まない。 (3)解体等工事の考え方について
この場合、建築物の床面積(80平方メートル)又は請負金額(100万円)を超えた場合に報告をするものとする。 (4)定期的に補修・改修を行う工作物の報告について平成18年9月1日以降に設置の工事に着手した工作物は、特定工事に該当しないことが明らかであるため、一度、平成18年9月1日以降に設置工事に着手した旨を報告すれば、その後の同一の部分の工事については報告が不要となります。 |
事前調査に係る報告事項(設置工事の着手日が平成18年9月1日以前の場合)
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事前調査に係る報告事項(設置工事の着手日が平成18年9月1日以降の場合)
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最新情報については、随時更新してまいります。
(3) 調査を適切に行うために必要な知識を有する者(令和5年10月1日適用)
特定建築材料の見落とし等により石綿の飛散事例が確認されていることから、より石綿の飛散防止を徹底するため、石綿障害予防規則において建築物に係る事前調査を行う者(一定の知見を有する者)が規定され、大気汚染防止法においても同様に整備されました。
受講期間等を考慮し、令和5年10月1日より義務付けされます。
- なお、適用以前においても、建築物石綿含有建材調査者講習を修了した者や、これらの者と同等以上の能力を有すると認められる者が事前調査を行うことが望ましいです。
- ここでいう「事前調査」とは、「設計図書その他書面による調査」及び「目視による調査」のことをいいます。
また、義務付けされる調査対象は、建築物(工作物は除く)となります。
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(参考)過去に行った事前調査結果の活用について 以下の条件をすべて満たしている場合には、義務付け以前に実施した調査結果を活用することができます。
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(4) 直接罰の創設(令和3年4月1日施行)
改正法の施行に伴い、罰則規定が新たに創設されました。
【追加された罰則規定の概要】
- 作業基準等の遵守義務が、解体等工事の下請負人に拡充されたことに伴い、罰則規定についても拡充されました。
- 事前調査結果の報告義務が規定されたことに伴い、虚偽の報告をした場合等に罰則規定が追加されました。
- 都道府県知事等が立入できる範囲や、報告を請求できる範囲が拡充されたことに伴い、罰則規定についても拡充されました。
違反行為の内容 | 罰則 |
適用範囲 |
---|---|---|
作業基準等が遵守されておらず、改善を命令されたが、 適切な措置を講じなかった。(追加) |
6か月以下の懲役又は 50万円以下の罰金 |
自主施工者 元請業者 下請負人 |
当該工事が、届出対象特定工事に該当しているにも関わらず、 特定粉じん排出等作業実施届出書を提出しなかった場合。 または、虚偽の届出をした場合。 |
3か月以下の懲役又は 30万円以下の罰金 |
発注者 自主施工者 |
届出対象特定工事に該当する特定粉じん排出等作業を、 規定された措置及び作業方法で行わなかった。(新設) |
3か月以下の懲役又は 30万円以下の罰金 |
自主施工者 元請業者 下請負人 |
事前調査結果の報告対象である建築物や工作物であるにも関わらず、 報告をしなかった。 または、虚偽の報告をした場合。(新設) |
30万円以下の罰金 |
自主施工者 元請業者 |
|
30万円以下の罰金 |
自主施工者 元請業者 下請負人 |
届出対象工事を災害時などの緊急時に施工する場合に、特定粉じん排出等 作業実施届出書を提出をしなかった。 または、虚偽の届出をした場合。 |
10万円以下の過料 |
発注者 自主施工者 |
(5) 不適切な作業の防止(令和3年4月1日施行)
作業基準等の遵守義務の拡充について
これまで作業基準等の遵守義務の対象は、特定工事の元請業者及び自主施工者と規定されていましたが、法改正に伴い、下請負人が追加されました。
なお、請負契約を複数結んでいる場合は、特定工事に係る全ての下請負人が作業基準等の順守義務の対象となります。
作業基準の詳細については、下記「・特定建築材料の除去等の方法について」を参照ください。
「下請負人」とは
元請業者から特定工事の全部または一部を請け負う者のこと。
または、下請負人より特定工事の全部または一部を請け負う者のこと。
改正後 | 改正前 |
---|---|
自主施工者 元請業者 下請負人 |
自主施工者 元請業者 |
特定工事の発注者等の配慮について
作業基準等の順守義務の対象に下請負人が追加されたことに伴い、解体等工事の発注者や元請業者は、下請負人が作業基準等を遵守できるよう配慮しなければなりません。
【請負契約に係る配慮について】(特定粉じん排出等作業を伴うものに限る)
特定工事の全てまたは一部を他の者に請け負わせる場合は、「作業基準の遵守を妨げるおそれのある条件(施工方法、工期、工事費等)」を付さないよう配慮しなければなりません。
また、請け負う者に対し、特定工事の概要を説明しなければなりません。(新設)
請負契約の組み合わせ (一例) |
契約時に 配慮すべき者 |
請負人への説明者 |
---|---|---|
元請業者 と 下請負人1 |
発注者 | 元請業者 |
下請負人1 と 下請負人2 |
元請業者 | 下請負人1 |
下請負人2 と 下請負人3 |
下請負人1 | 下請負人2 |
|
特定建築材料の除去等の方法(作業基準)について
特定工事の元請業者または自主施工者及び下請負人は、特定建築材料に係る作業を行う場合は、作業基準で定められた方法で除去等を行わなければなりません。
今般、全ての石綿含有建材を特定建築材料に追加したことに伴い、作業基準についても規制が強化されました。
【作業基準に係る改正の概要】
- 石綿含有仕上塗材、その他の石綿含有建材(レベル3建材)に係る作業基準が新たに規定されました。
- 吹付け石綿及び石綿含有断熱材等(レベル1、レベル2建材)の作業基準については、遵守義務の対象に下請負人が追加される等、規制が強化されました。
特定建築材料の除去等の方法(作業基準)の詳細については、以下のとおりです。
(1)特定建築材料の除去等の方法について(レベル3建材)
改正法の施行に伴い、特定工事のうち、石綿含有仕上塗材、その他の石綿含有建材(レベル3建材)に係る作業基準が新たに規定されました。
建材名称 | 作業基準 |
---|---|
石綿含有 成形板等 |
・次に掲げる事項を遵守して作業の対象となる建築物等に使用されている特定建築材料を除去するほか、 又はこれと同等以上の効果を有する措置を講ずること。 イ 切断、破砕等することなくそのまま建築物等から取り外すこと。 ロ そのまま取り外すことが困難な場合は、除去する特定建築材料を薬液等により湿潤化すること。 ハ 石綿含有けい酸カルシウム板第1種にあっては、イの方法により除去することが技術上著しく困難な とき又は一部除去の場合など改造・補修作業の性質上適しないときは、次に掲げる措置を講ずること。 (1)当該特定建築材料の除去を行う部分の周辺を事前に養生すること。 (作業場所をプラスチックシート等で囲うことであり、負圧管理までは要しない。) (2)当該特定建築材料を薬液等により湿潤化すること。 ニ 当該建築材料の除去後、作業場内の清掃その他の特定粉じんの処理を行うこと。 この場合において、ハの規定により養生を行ったときは、当該養生を解く前に清掃を行うこと。 |
石綿含有 仕上塗材 |
・次に掲げる事項を遵守して作業の対象となる建築物等に使用されている特定建築材料を除去するほか、 又はこれと同等以上の効果を有する措置を講ずること。 イ 除去する特定建築材料を薬液等により湿潤化すること。 (ロに規定により特定建築材料を除去する場合を除く。) ロ 電気グラインダーその他の電動工具を用いて特定建築材料を除去するときは、次に掲げる措置を 講ずること。 (1)当該特定建築材料の除去を行う部分の周辺を事前に養生すること。 (作業場所をプラスチックシート等で囲うことであり、負圧管理までは要しない。) (2)当該特定建築材料を薬液等により湿潤化すること。 ハ 当該建築材料の除去後、作業場内の清掃その他の特定粉じんの処理を行うこと。 この場合において、ロの規定により養生を行ったときは、当該養生を解く前に清掃を行うこと。 |
「同等以上の効果を有する措置」については、今後環境省よりマニュアルで示される予定です。最新情報については、随時更新してまいります。
(2)特定建築材料の除去等の方法について(レベル1、レベル2建材)
改正法の施行に伴い、届出対象特定工事(吹付け石綿及び石綿含有断熱材等)の作業基準に係る規制が強化されました。
【規制強化の概要】
- 作業基準の遵守義務に下請負人が追加されました。
- 負圧の状況の確認を行うべき頻度に、作業開始前の他、「作業中断時」が追加されました。
- 集じん・排気装置の正常な稼働の確認する頻度として、作業直後の他、「集じん排気装置の使用場所を変更した時」や「フィルタ交換時」等、必要に応じて随時行うよう規定されました。
- 隔離を解く前の確認事項や清掃の実施について、作業基準に追加されました。
規制強化の詳細については以下のとおりです。
【届出対象特定工事に係る除去等の方法について】 届出対象特定工事の元請業者若しくは下請負人又は自主施工者は、下記のいずれかの措置をそれぞれ規定された方法で行わなければなりません。 直接罰が適用となるのは、以下の方法により行わなかった場合となります。
(参考)
囲い込み及び封じ込めは、建築物等の改造又は補修のみに適用できます。 |
【負圧の状況の確認】 隔離を行った作業場及び前室の負圧確認については、従前より作業基準に定められておりましたが、今回石綿の漏洩防止の強化を図るため、確認の頻度が追加されました。 負圧の確認頻度(改正後)作業開始前、中断時(作業の中断、休憩時、当日の作業終了時) |
【集じん・排気装置の正常な稼働の確認】 従前より、集じん・排気装置の排出口において粉じんを迅速に計測することにより、正常に集じん・排気装置が稼働しているか確認をするよう、作業基準に定められておりましたが、今回、稼働確認の頻度が追加されました。 集じん・排気装置の稼働確認の頻度(改正後)当該作業場所で初めて作業を開始直後、集じん・排気装置の使用場所を変更した場合、フィルタを交換した場合、その他必要がある場合。
(参考)その他必要がある場合の一例
(一連の隔離空間において除去作業する区画が変わったり、同時に除去作業を行う箇所を増やした、集じん・排気装置の設定を変えた場合等) |
【作業場所の隔離を解く前の確認・清掃の実施について】 従前より、隔離を解く前の措置に係る作業基準は規定されていましたが、今回、新たに項目が追加されました。
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特定粉じん排出等作業の完了の確認について
従前より、特定粉じん排出等作業の完了の確認は、石綿に関して一定の知見を有している者(石綿作業主任者等)によって目視で確認することとされていました。
改正法の施行に伴い、作業完了の確認は、「作業完了の確認を適切に行うために必要な知識を有する者」が目視で行うことと規定されました。
「必要な知識を有する者」とは
「石綿作業主任者」又は「事前調査を行わせる者」のことをいいます。「事前調査を行わせる者」には、建築物石綿含有建材調査者講習 等の講習を修了した者、一般社団法人日本アスベスト調査診断協会に登録されている者等が含まれています。
特定粉じん排出等作業の実施状況の記録について
特定工事の元請業者、自主施工者又は下請負人は、当該特定工事における分担に応じて、特定粉じん排出等作業の実施状況を記録し、特定工事が終了するまで保存しなければなりません。
ここでいう記録とは、「作業基準等を遵守しているか」、「負圧の確認状況」や「集じん・排気装置の正常の確認」等を作業期間中に記録したものをいいます。
特定粉じん排出等作業の結果の報告・記録作成・保存について
- 特定工事の元請業者は、特定粉じん排出等作業が完了したときは、その結果を遅延なく発注者へ文面で報告しなければなりません。
また、報告に使用した書面の写しを、特定工事が終了した日から3年間保存しなければなりません。 - 特定工事の元請業者及び自主施工者は、特定粉じん排出等作業に関する記録を作成し、特定工事が終了した日から3年間保存しなければなりません。
また、作業完了の確認を行った者が「作業完了の確認を適切に行うために必要な知識を有する者」に該当することを明らかにする書類(写し)をあわせて保存しなければなりません。(石綿作業主任者の資格者証、一般建築物石綿含有建材調査者の修了証等) - 記録の保存方法については、紙媒体の他、電子データによる方法も可能です。
項目 | 元請業者 | 自主施工者 | 下請負人 |
記録の保存期間 |
---|---|---|---|---|
作業の実施状況の記録・保存 (分担に応じて作成) |
必要 |
必要 |
必要 |
特定工事終了まで |
特定工事の結果に係る 記録作成・保存 |
必要 |
必要 |
不要 |
特定工事終了日から3年間 |
発注者への結果報告 (報告書の作成・保存) |
必要 | 不要 | 不要 |
特定工事終了日から3年間 |
報告事項及び記録の詳細についてはこちら
【作業の実施状況の記録について】 「作業の実施状況」とは
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【特定工事の結果に係る記録事項(隔離を要しない特定工事の場合)】
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【特定工事の結果に係る記録事項(届出対象特定工事であり、かつ、隔離を要する場合)】
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【発注者への報告事項について(全ての特定工事)】
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(6) その他(令和3年4月1日施行)
立入検査範囲の拡充について
改正法の施行に伴い、報告徴収の対象に下請負人が追加され、立入検査の対象が拡充されました。
改正後 | 改正前 |
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【報告徴収の対象】 発注者、元請業者、自主施工者、 下請負人 【立入検査の対象】 解体等工事に係る建築物等 解体等工事の作業現場 元請業者の営業所や事務所等 自主施工者の営業所や事務所等 下請負人の営業所や事務所等 |
【報告徴収の対象】 発注者、受注者、自主施工者、 特定工事を施工する者
【立入調査の対象】 解体等工事に係る建築物等 解体等工事の作業現場
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国及び地方公共団体の責務の創設について
【国の施策について】
国は、建築物等に特定建築材料が使用されているか否かを把握するために必要な情報の収集、整理及び提供その他の特定工事等に伴う特定粉じんの排出又は飛散の抑制に関する施策の実施に努めなければならないとしました。
【地方公共団体の施策について】
- 地方公共団体は、建築物等の所有者、管理者または占有者に対し、特定建築材料及び建築物等に特定建築材料が含まれているか否かの把握に関する知識の普及を図るよう努めなければならないとしました。
- また、地域の実情に応じ、特定工事等に伴う特定粉じんの排出又は飛散の抑制するよう必要な措置を講ずることに努めなければならないとしました。
【参考文献】
- 「大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行等について」(令和2年11月30日付け環水大大発第2011301号環境省水・大気環境局長通知)
- 「大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)の一部を改正する法律」(令和2年6月5日付け公布 号外法律第39号)
- 「大気汚染防止法施行令(昭和43年政令第329号)の一部を改正する政令」(令和2年10月7日付け公布 政令第304号)
- 「大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」(令和2年10月7日付け公布 政令303号)
- 「大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行に伴う環境関係省令の整備に関する省令」(大気汚染防止法施行規則の一部改正)(令和2年10月5日付け公布 号外環境省令第25号)
- 「設計図書その他の書面による調査及び特定建築材料の有無の目視による調査を適切に行うために必要な知識を有する者として環境大臣が定める者」(令和2年10月7日付け公布 環境省告示第76号)
- 「特定建築材料が使用されているおそれが大きいものとして環境大臣が定める工作物」(令和2年10月7日付け公布 環境省告示第77号)
- 「特定粉じんを比較的多量に発生し、又は飛散させる原因となるものとして環境大臣が定める石綿含有成形板等」(令和2年10月7日付け7交付 環境省告示第78号)
3 外部リンク(環境省ホームページ、厚生労働省ホームページ)
この記事に関するお問い合わせ先
市民環境部 環境保全課 調査指導グループ
〒031-8686 青森県八戸市内丸一丁目1番1号 市庁別館6階
電話:0178-43-9107 ファックス:0178-47-0722
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更新日:2022年03月11日