【八戸特派大使通信】第29回 浜田 剛爾
浜田 剛爾(はまだ ごうじ)/ 国際芸術センター青森 館長
昭和19年青森市生まれ。東京芸術大学美術学部彫刻学科卒業。昭和46年以降、日本のパフォーマンス・アーティストのパイオニアとして国際的に活動を行う。また、自身の創作活動のほか、各種のアートプログラムや国際展のプロデューサーを務め、パフォーマンス・アートのプロジェクトを数多く展開。
「トシマ シゲユキ」
八戸へは年七~八回意味もなく立ち寄る。いや少しは用件などもあるのだが、しいて足がなぜ向くのかと理由を考えると友人がいるからだろう。会えばヤァーから食後の酒宴まで一直線である。
友人という存在はむやみに頭をさげる客商売でもないし、また、手だけ握って一票と勘定する賢人でもない。ましてや二枚舌など、はなからである。
たくさんの八戸の友人の中から一人選べ、と言えばもうこれはトシマシゲユキ(注釈1)という人物に限る。兄・弘尚氏(画家)や姉・和子さん(舞踏家)も傑出した人物だが、その博覧強記ぶりから精神と演劇の奇矯さにおいて右に出るものはいない。友人だからいろいろ話す。また、話すことも多い。が、解らない。言語明解意味不明か、もしくはどちらもなのだ。言葉が出る口が口の中からに限らず、耳の穴からも目玉の横からも、あるときは全身の毛穴から噴き出るかのごとく、なのである。トシマ流に倣って言ってみれば「ロクス・ソルス」的でありボルヘス好みなのである。
八戸にこんな人あり、というわけではないが常に「パフォーマティブ」的状況をつくり続けてきたこの演出家は全体全身演劇家でもある。言葉の裏をとり、J・バタイユを戦いと訳す知的戦略家でもある。その意味でも八戸がそろそろ青森県に約束を守るようにと最近も決議したばかりの「芸術パーク」の実現のためには、正攻法もさることながら中央文化人に動員をかけられるトシマシゲユキの奇矯さが今必要とされている。
そう言えば、県がらみでいうと、現在の青森県立美術館で開かれているパフォーミング・アーツもなかなか苦戦をしいられていると聞く。ともに演劇の八戸・弘前の雄が立ち上がる条件はそろったようだ。舞台は青森県。津軽のハセガワ(注釈2)的土着性と南部のトシマ的神話性が手を握るのか否か。ここは一番「青森力」のようなもので、その全身をカミガミにささげてはどうだろうか。空間プロデューサーとしてもうひとつの顔を期待しています。
- (注釈1)トシマシゲユキ:豊島重之(演出家)・「モレキュラーシアター」主宰、市民アートサポート「イカノフ」キュレーター
- (注釈2)ハセガワ:長谷川孝治(演出家)・「弘前劇場」主宰
(「広報はちのへ」平成19年 9月号掲載記事)
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更新日:2020年01月07日