【八戸特派大使通信】第43回 中村 新吉

更新日:2020年01月07日

中村 新吉(なかむら しんきち)/教育カウンセラー・元八戸市学生寮 寮長

中村 新吉さんの写真

昭和8年八戸市生まれ。豊崎小から旧制八中へ。八戸高校卒業。 学習院大学文学部卒業後、都立高校教員となり東京大学大学院修士課程に研究生として学ぶ。倫理学専攻。東京都教育委員会、都立高校長、全倫研会長、全国学校経営研究会会長、大妻女子大学講師等歴任。関心は教育人間学。

御縁があって東京都練馬区にある八戸市学生寮の寮長職を仰せつかり、足かけ三年程務めさせていただきました。

寮生の殆どは八戸高校はじめ市内の公私立高校出身で、いろんな大学や専門学校に通う学生達四十名弱、寮母さんや調理師さんにも恵まれてとてもなごやかで家族的でした。大学の勉強の仕方やレポートの書き方を教え合う、アルバイト先の紹介、不便している物の融通、洗濯や風呂当番、ゴミ出しの協力など学生生活の拠点で、草刈り作業やバーベキュー、入寮生歓迎や卒寮生の追出しコンパなど、友人との語らい、いつ帰ってもあったかい御飯があり風呂に入 れるわが家のような心安らぐ場でした。共同生活を通して友情を深め、助け合いと感謝の心、自立自活の精神、たくましく生きる力を磨き合うことができたことを今も誇りに思っています。

八戸の保護者の皆様からよく電話や手紙を頂戴しました。この頃息子が自分の物を自分で洗濯したり、家の中や部屋の片付けをしたり買物に行ってくれるようになったとか、高校の時よりも親思いになったようで嬉しいですとか、ありがとう、おはようと言えるようになって学生寮に入れてもらって皆さんのおかげと感謝しております、と。嬉しいものでした。親が苦労して自分を育てて東京まで出してくれた、これ以上親に苦労させたくない、親元を離れて自活し始めて親に甘えていた自分がよくわかり親の有難味がわかるようです。

私は寮長として成人式を迎えた寮生たちに「立志報恩」と短冊に書いて贈りました。志を立て目標に向かって努力家になれ、くず折れるな、怠け者になるな、働き者になれ、それが世話になってきた皆さんへの御恩返しになるんだ、と期待を込めてね。皆芯のしっかりとした青年達でその将来を楽しみにしております。

ご承知のように、八戸市学生寮は、当時の市長岩岡徳兵衛氏や多くの篤志家の努力によって建設され、八戸市はじめ各地で活躍する約千名を越える優秀な人材、リーダーを輩出してきましたが、五十年に亘る輝かしい歴史の幕を閉じることになりました。最後の寮長としてその職責に当たり得たことを光栄に存じ心から感謝しております。八戸市の教育力に期待しております。

(「広報はちのへ」平成21年 6月号掲載記事)

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