柏崎 順子(かしわざき じゅんこ)/一橋大学大学院法学研究科教授


上北郡下田町(現おいらせ町) 生まれ。八戸高校卒。実践女子大学大学院文学研究科博 士課程修了。一橋大学講師、 助教授を経て現職。専門は日本近世文学。江戸時代の書物 文化がテーマ。編著に「松会版書目」。東京都在住。

八戸の奥深さ 

 東京で八戸ナンバーの車に乗っているので、よく皆に八戸のことを聞かれる。おいしいものの自慢はイカそーめん、いちご煮、つるこまんじゅう、ほっけ、せんべい汁等、次から次へとあげることができるし、自然で言えば種差海岸にいたる海岸線沿いの風景はいいですよとお薦めする。

 一般的な海のイメージである、明るく開放的な雰囲気とは一線を画した静かで落ち着いた風情が絶品だと思っているからである。

 種差海岸の説明には東山魁夷の「道」という絵が種差海岸沿いの道であるということを付け加えれば、ほとんどの方がその事実をご存じなく驚かれるが、また私の伝えたい海岸の趣を理解していただけることが多い。しかし時間に余裕のあるときであれば、さらに自慢したいことがある。

 八戸では江戸時代、藩士が書物仲間(同業組合)を作って、資金を出し合い、書物を購入し、それを共有して勉強していた。 しかもその書物は仲間以外にも貸し出されていたらしく、いわば公共の図書館のような機能も果たしていたのである。

 このことは最近小林文雄氏が『歴史評論』605号に「武家の蔵書と収集活動- 八戸藩書物仲間の紹介-」という題で報告されている(2000年9月)。

 日本は江戸時代初期に出版が始まるが、 そのことが情報や知識の伝達に現在のIT革命に匹敵するほどの変化を社会にもたらした。しかし出版をする本屋はほとんどが江戸・大坂・京都といった大都市に集中しており、江戸時代に八戸に本屋があった形跡は今のところ確認されていない。

 そこで勉強熱心な藩士たちは参勤交代で江戸に滞在している藩士に頼んで江戸の本屋から書物を購入してもらい、八戸に送ってもらって勉強の資としたのである。

  その向学心と、自分たちの工夫で得た書物を囲い込むことなく知識を広く共有しよ うとしたこうした態度は、現在の八戸の人間がもっているおおらかさ、懐の深さにつながるものであり、読後すがすがしい思いであった。  

 八戸は食・自然・歴史(人間)の自慢ができる故郷である。

(「広報はちのへ」平成19年 5月号掲載記事)

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