赤坂 信(あかさか まこと)/ 千葉大学教授


昭和25年新潟県新発田市生まれ。44年八戸高校卒。51年千葉大学大学院修士課程修了。53年ハノーバー大学(ドイツ) 造園史、都市緑地史専攻、56年に千葉大学園芸学部に助手として採用され、助教授を経て現在、千葉大学大学院園芸学研究科教授。世界遺産委員会の諮問委員 会ICOMOS のメンバー日本イコモスの会員、眺望遺産(およびセッティング)小委員会主査。

 今からちょうど十年前に起きた「八戸駅前の大イチイ問題」を憶えておいででしょうか。

 新幹線から降りてバスやタクシー乗り場へ向かうエスカレーターの降り口に植えてある大きなイチイの木が移植される話があった頃のことです。「八戸駅前の大イチイ問題」という記事(2004年1月1日)を八戸に住む親友が送ってきました。千葉大学の園芸学部で22年間(当時)造園学を教えている私になにかコメントをということでしょう。

 私自身が実際に見て得た印象の範囲ですが、イチイは移植しなくていいという私の考えをデーリー東北に投稿したことがありました。後日、反響があったと友人から聞き、うれしく思いました。少しでもふるさとのお役に立てたかと思えば、なおさらです。初めて駅前のイチイの大木と出会った印象とその植えられた位置の解釈について書きました。

 「初めてあのイチイの大木に出会ったときのことです。「はやて」を降りて、新しい駅にびっくり。あの古いままの暗く狭い階段はもうない。真新しい駅ビルのエスカレーターを降りていくと、出口になにかが見える。しだいにそれが大きな木だとわかる。エスカレーターの下に着いたとき、その大木は大きく手を広げて私を迎えてくれました。それがオンコ(イチイ)ということは、さらにうれしいことでした。子どもの頃、赤い実のなるオンコの木の下で遊んだことがあるからでしょうか。私にとっては、オンコはふるさとの木です。真新しい駅ビルのようすにまごつく人々もあの木を見て何となく安堵するのではないでしょうか。出入口の真ん前にあるイチイは、真ん前にあるからこそ出迎えてくれるように感じるのです。あの距離の近さはむしろほかには見られない特長とみるべきでしょう。たとえそれが偶然そういう事態になった結果だとしても。(後略)」

 あれから10年、あの「お出迎えの大イチイ」はまだ元気で八戸にやってくる人たちを迎えてくれているでしょうか。イチイの大木の存廃をめぐって市民レベルで議論されたこと自体が重要です。街の中で市民に愛されるもの、なじみのあるものは何かを考え、これを大事にしていけば、都市として成熟した風景を持つことにつながるでしょう。
 
 
 

(「広報はちのへ」平成26年8月号掲載記事)

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